モデル時代の“無言の表現”から培ったもの

ファッションショーのモデルとして、20年間のキャリアを積んできた澁谷有里さん。現在は、その経験を活かし、ウォーキング・デザイナーとして活躍している。

「モデル事務所の後輩からの要望で、彼女たちにウォーキングの指導をはじめたのがきっかけとなり、自分ができることを伝えていく面白さを知りました。30歳になったとき、“studio shibuya”というウォーキングスタジオを設立。モデル業と並行して、大手プロダクションの専属トレーナーとして、多くのモデルたちの指導に当たってきました」

評判を聞きつけた企業からオファーがあり、2005年には、愛知県で開催された「愛・地球博」のトヨタ館のスタッフに、立ち居振る舞いや歩き方を指導するコーチとして抜擢された。それを機に、一般企業の接遇研修の講師として、各方面からの依頼が殺到するようになったのだという。

「ただ単に、立ち居振る舞いを指導するだけでなく、なぜそれが必要なのか、根本的な考え方や心構えからお話をするようにしています。もちろん、接遇スタイルを画一化するつもりはありません。その人の個性や思いが大切です。基本的な方法論や技術を踏まえたうえで“自分らしく”あるべきと伝えています」

澁谷さんの半生は大きく、2つの時代に分けられている。ひとつはモデルとして、無言での表現を行っていた時代、そしてもうひとつは指導者として、言葉を駆使して表現する時代。

「モデルの表現には自分の個性を抑えて、デザイナーやブランド、演出家の意図や世界観を忠実に再現することが求められていました。仕事は楽しかったけれども、常に何かが足りないという飢餓感があったのは確か。人に指導するようになって、言葉を駆使した表現に重きを置くようになり、自分の適性を見つけたような気がしました

もちろん、モデル経験は指導の中に活かされている。なぜなら、無言の表現を追求してきたからこそ、その上に言葉をのせることで、身体表現と言葉の両方を補完しあうことが可能になったから。

「その両方の手段を得たことで、モデルの仕事にも、指導の仕事にも“深み”が生まれるようになったのです」

常に前を見て進んでいく。そんな澁谷さんが新しいチャレンジとして、現在、取り組んでいるのが、自らのファッションブランドの立ち上げだ。

「ターゲットは、40代以上の女性。酸いも甘いも経験し、高級ブランドも経験済み。だけど、ファストファッションもうまく使いこなしているといった方々です。巷には、様々な商品が溢れているけれど、欲しいものが見当たらない。そんな女性に、“楽しいがある毎日”“楽しいを纏う毎日”をコンセプトにした商品をお届けする予定です」

“言葉のない表現”から“言葉による表現”へ。商品という“カタチ”として“表現”を続けていく澁谷さん。常に進化を続ける彼女の姿に共鳴する女性も多いことだろう。

http://www.studio-shibuya.com/

インタビュアー・伊藤秋廣(エーアイプロダクション

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